核心になつた部分の、移動の道すぢに遺つた落ちこぼれと見るのが、一番ほんとうの考へらしい。内地にあつた古代生活の、現に琉球諸島に保存せられて居るものは、非常に多い。さすれば、此南島にある民間伝承の影が、一度は、我々の祖先の生活の上にも、翳《サ》してゐた事も考へられなくはない。
琉球女は、今も長旅や嫁入りには、香炉を持つて行く。其香炉は神を表して居るものである。大抵は、元の家の仏壇から神棚へ祀り替へられる程、年代を経た先祖の神様と考へられて居る様だ。併し此女の持ちあるく香炉は、大分意味の違うた物の様である。
女の香炉は、母から伝はる。根神《ネカミ》と謂はれて居る祖先神の香炉は、根所《ネドコロ》なる本家にあるばかりで、勝手に数を殖して、持ちあるくことは許されて居ない。此香炉は、女だけの祀る神なのである。男とさへ言へば、子すら、夫すら、拝む事も、お撤《サガ》りを戴く事も禁ぜられてゐる。沖縄本島では、段々意義が忘れられて、仏壇の位牌を持ち出したもの位に考へる人もあるが、其でも尚、此香炉に対する信仰の形は近代化しきつても居ない。八重山の石垣島では、とりわけ此考へが著しく残つて居る。此島では、女の香
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