の中で、一つの系統の民間伝承が、色々な過程を示してゐる事である。ある村では、現に神幸が行はれてゐる。其半里と離れない処では、民譚化を遂げて、神幸の夜に、神に敬礼せなかつた草の、呪はれて、馬さへ喰はぬ藻になつた、と言ふ様な形になつた。其と入り海を隔てた村では、其型で神名だけが替つてゐて、ある家筋の正月行事との関係を説いてゐる。かと思ふと、東岸の村には、又神が入れ替つて、同様な話が伝はり、其一里と隔らぬ西の村には、神が歴史上の人物ではなく、家の祖先に替つて、壱州移住第一夜の事実を、今もとり行ふのだ、と言うてゐる。おなじ海の彼岸から来た神が、名高い番匠となつてゐる。左甚五郎と山姥との争ひの民譚にも似てゐる。
前に述べた原因は、今一つ奥を説かねばならぬ。海から来る神は、建築物を中心として、祝福の呪言を述べるのであつた。其で、建築に与る人が神に仮装して、普請始めなどに出た習慣が出来た。後世、番匠等が玉女壇を設けたり、標立の柱や、大弓矢などを飾つて、儀式を行ふのも、此からである。新室のほかひ[#「新室のほかひ」に傍線]に来た神と神に仮装した後代の番匠との聯絡が忘れられて、飛騨の匠や竹田の番匠など言
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