雪の島
熊本利平氏に寄す
折口信夫

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)壱州《イシユウ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)段々|寄生貝《ガウナ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「魚+昜」、90−10]

 [#(…)]:訓点送り仮名
 (例)湯[#(ノ)]本温泉

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぎら/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

     一

志賀の鼻を出離れても、内海とかはらぬ静かな凪ぎであつた。舳の向き加減で時たまさし替る光りを、蝙蝠傘に調節してよけながら、玄海の空にまつ直に昇る船の煙に、目を凝してゐた。艫のふなべり枕に寝てゐて、しぶき一雫うけぬ位である。時々、首を擡げて見やると、壱州《イシユウ》らしい海神《ワタツミ》の頭飾《カザシ》の島が、段々|寄生貝《ガウナ》になり、鵜の鳥になりして、やつと其国らしい姿に整うて来た。あの波止場《ハトバ》を、此発動機の姉《
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