述べて来ると、ひらりと私の頭をよぎるものがある。此には何らの関係もないことかも知れぬ。或は、切り離せないものであるかも訣らない。ともかく、おもしろい類似を持つてゐるのは、奥州地方から北海道にかけて行はれてゐる、養蚕・狩猟の神と考へられて来たおしら様[#「おしら様」に傍線]といふ、人形式の御神体のあることである。
おしら様[#「おしら様」に傍線]には馬などの動物の頭のもあるが、大体に於て、男女一対のものが多い様である。而も、しら[#「しら」に傍線]・ひな[#「ひな」に傍線]は音韻の関係が、頗、密接であるから、万更、没交渉のものと思はれぬ。
さすれば、ひな[#「ひな」に傍線]は男神・女神の揃つたもので、祓除の形代《カタシロ》以前からあつたものと思うてもよからう。それが三月三日に祭日を定めることになつたのは、大宮之※[#「口+羊」、第3水準1−15−1]祭りと同様此偶神を対象として、この日の儀礼を行うた家々の民間祭祀から、出てゐるものではなからうか。
さうとすれば、其処に、淡島風の形代信仰と一致融合すべき点が出来てくる訣である。尤、淡島様の配流は、撫で物[#「撫で物」に傍線]の水に捨てられる
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