である。
ひゝな[#「ひゝな」に傍線]といふ言葉は、古く長音符の用法を発明しなかつた時代に、長音を表すのに同音を重ねたものであらう。鶯《ウグヒス》をほゝき鳥[#「ほゝき鳥」に傍線]、帚《ハウキ》をはゝき[#「はゝき」に傍線]、蕗をふゝき[#「ふゝき」に傍線]など言ふ風に表すことが多かつた。此ひゝな[#「ひゝな」に傍線]も其一例である。であるから、ひゝな[#「ひゝな」に傍線]が約まつて、ひな[#「ひな」に傍線]になつたといふ様なことは、万が一にもないことで、ひな[#「ひな」に傍線]を長音化して用ゐることが多かつた為でなければならぬ。
想像すれば、ひな[#「ひな」に傍線]は一対のものといふ程の意味を持つてゐたらしく考へられるが、暫く其危険を避けても、鳥の雛の如く可憐なもの、又は形代の意味の人間のひながた[#「ひながた」に傍線]といふ様な語から、出たものでないことは明言出来る。
前にもいつた「女神」があるからには「男神」もあつたのであらう。其を合せて、ひゝな神[#「ひゝな神」に傍線]と言うたことも、略推定出来るのである。
三 奥州のおしらさま[#「おしらさま」に傍線]
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