きん[#「ひようきん」に傍点]な趣きを見せてゐたものに、大宮之※[#「口+羊」、第3水準1−15−1]《オホミヤノメ》祭りがある。東国風を多量に取り込んで、其儀礼は野趣横溢、文字通りなものであつた。此には名高い大宮之※[#「口+羊」、第3水準1−15−1]祭りの祭文があつて、其が誦まれる対象は、宮中の八神殿といふよりも、寧、其折臨時に拵へる竹の柄につけられた華蓋《キヌガサ》、其に結び下げた男女三対、並びに一人の従者の人形にあつたらしい。つまり、其が祀られたらしいのである。此が宮中では、古くひゝな[#「ひゝな」に傍線]といはれてゐた様である。
大宮之※[#「口+羊」、第3水準1−15−1]祭りとは十二月の初午の日に行はれたもので、後世の二月の初午の稲荷《イナリ》祭りの源流だ、と考へられてゐる。此祭りの目的には、悪事災難を除却するといふ意味はあつたのであるが、其ひゝな[#「ひゝな」に傍線]たちを必しも、撫で物[#「撫で物」に傍線]其他の如く、人間の穢れを脊負つて往つてくれるものとも決められない。通常は此を以て、大宮之※[#「口+羊」、第3水準1−15−1]以下の神々の象徴と見てゐたらしいの
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