きつめ、あるいはもともと原話が、錯倒していたため、すぐ後の檍原《アハギハラ》の禊《ミソ》ぎの条《くだり》に出るのを、平坂の黄泉道守《ヨモツチモリ》の白言と並べたのかも知れぬ。その言うことをよろしとして散去したとあるのは、禊ぎを教えたものと見るべきであろう。くゝり[#「くゝり」に傍線]は水を潜《クヾ》ることである。泳の字を宛てているところから見れば、神名の意義も知れる。くゝり[#「くゝり」に傍線]出た女神ゆえの名であろう。いざなぎの尊[#「いざなぎの尊」に傍線]ばかりの行動として伝えたため、この神は陰の者になったのであろう。例の神功紀の文は、このくゝり[#「くゝり」に傍線]媛からみつは[#「みつは」に傍線]へ続く禊ぎの叙事詩の断篇化した形である。住吉神の名は、底と中と表《ウヘ》とに居て、神の身を新しく活《いか》した力の三つの分化である。「つゝ」という語は、蛇(=雷)を意味する古語である。「を」は男性の義に考えられてきたようであるが、それに並べて考えられた※[#「さんずい+文」、第3水準1−86−53]売《ミヌメ》・宗像・水沼の神は実は神ではなかった。神に近い女、神として生きている神女なる
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