、みぬま[#「みぬま」に傍線]としての女が出て、禊ぎの儀式の手引きをした。それがしだいに合理化して、水辺祓除のかいぞえ[#「かいぞえ」に傍線]に中臣女のような為事をするようになり、そのことに関した呪詞の文句がいよいよ無意義になり、他の知識や、行事・習慣から解釈して、発想法を拗《ねじ》れさせてきた。そこに、だいたいはきまって、一部分おぼろな気分表現が、出てきたのだろう。
 大湯坐《オホユヱ》・若湯坐《ワカユヱ》の発生も知れる。みぬま[#「みぬま」に傍線]に、候補者または「控え」の義のわかみぬま[#「わかみぬま」に傍線]があったのであろう。大和宮廷の呪詞・物語には、みつは[#「みつは」に傍線]をただの雨雪の神として、おかみ[#「おかみ」に傍線]に対する女性の精霊と見た傾きがあり、丹生女神とすら、いくぶん、別のものらしく考えた痕《あと》があるのは、後入の習合だからであろう。
 いざなぎ[#「いざなぎ」に傍線]の禊ぎに先だって、よもつひら坂[#「よもつひら坂」に傍線]に現れて「白《もう》す言《こと》」あった菊理《クヽリ》媛(日本紀一書)は、みぬま[#「みぬま」に傍線]類の神ではないか。物語を書
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