代になりまして、やつと近頃、戦争後もう万葉一途の時代でもあるまい、源氏物語をそろ/\出して見ようではないかといふやうな考への起つて来まして、源氏学興隆の時が来ました。それで万葉と源氏の並立時代といふやうな有様になつて来ました。けれども、だがまだ/\万葉を探求しないでは、万葉の持つてゐる問題が、そのまゝ残る。今におき、我々の解決し切れない問題は、早晩貴方方にお任せしなければならないものとして、沢山残つてゐると思ひます。こんなに懸案を残して去るといふことは、それだけ、我々が無力で、不勉強であつたといふことになります。併し、源氏と申しますものゝ源氏にだつて万葉的要素が沢山ございます。我々は万葉と源氏との間、もつと平たく申しますと、奈良朝及び其前と、それから平安朝とのその間の聯絡といふことは、殆んど考へずにまゐつたので、この二つの聯絡をば何とか考へて行く者が、今後の学界に現れて、著しい、為事も残して行くことになるのだと信じて居ります。さうでなくても、古い言葉で解くことの出来ないものが、随分そのまゝになつてをります。源氏その他のものには出て来るけれども、記紀万葉の世界には出て来ない、併し、その言
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