を採つた部分もあつた事が、辿れるやうになる事と思ふ。さすれば、踏歌や、田楽と極めてよく似て居て、唯、ある差異があつたと言ふ事になる。即、神楽では、謡ひ物としては、短歌形式が主要視せられた事が、其一つである。其二は、古くから「神遊び」と称せられてゐたものに似て居て、同一の見方に這入ることが出来た事、さうして其が其特徴たる「かぐら」の名を発揮して来たこと。だから最初「かぐら神楽《カムアソビ》」など言ふ名で呼ばれて居た事を考へて見る方が、古態を思ひ易くてよい。第三は、其巡行の中心として所謂「かぐら」なるものが行進の列に加つて居た事。さうして其|神座《カグラ》に据ゑた神体が、異風なものであつたらしい事。さうして、其|神座《カグラ》に居る神の実体は、後の神楽には、閑却せられて了ふ様になつたらしい。だから神楽も、古いものほど、神体を据ゑた神座《カグラ》なるものを中心とした群行だつたに違ひない。神楽では、安曇[#(ノ)]磯良を象つた鬼面|幌身《ホロミ》の神楽獅子に近いものだつたのではないか。
才《サイ》[#(ノ)]男《ヲ》が、宮廷以外は、多く人形を用ゐたらしい処から見ると、神楽の形も想像が出来ると思
前へ
次へ
全38ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング