かうした形は第二次以下のものではあるが、ともかくも風俗歌譜で見ると、一つの歌詞のやうにまでなつて居たのだ。「音なせそや。みそかなれ。大宮近くて、鳴り高し。あはれの。鳴り高し」「あなかま。従者《コンドモ》等や。みそかなれ。大宮近くて、鳴り高し。あはれの。鳴り高し」。此から見ると、「鳴り高し」の意義が思はれる。宮門においてする警蹕なのである。内侍所御神楽は、伝来を尋ねると、確かに石清水八幡出のものである。だが、此由緒は、清暑堂の御神楽と混淆して居ないとも限らない。「韓神《カラカミ》」の歌、或は枯荻をかざし舞ふ所作などが、重要視せられ、ある種の神楽によると、韓神歌が重複したりしてゐる。其から見ると、平安京城の地主神たる薗・韓神の宮廷祝福の為に、参入した事を暗示してゐるのでないかと思ふ。
どれがどれと言ふ風に、三種の神遊以外に更にあつたと思はれる宮廷神楽を明確に分たうとする事が、不自然であり、現に其目安となつてゐる歌詞さへ、混乱してゐるのだから、出来ない相談でもある。が、北御門の神楽の所属は、ある神楽謂はゞ、中門口の芸であつた所から、詞章が少かつたのか、又全然別殊のものか、今後も、尚問題になる
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