っている。そう言う道を通って、二十町も登ると、高湯とは別な湯元がある。小さな湧き場だが、お釜と言って、三山の湯殿山を思わせる様な恰好で、温泉が岩伝いに落ちて居る。此湯は、里人が神聖がって居たのだけれど、やはり白部の村人が、これを引いて湯宿を開いている。お釜の二町程下に、二階屋のあぶなく立って居るのが其だ。新高湯と言う。高湯から歩いて登るのにちょうど頃合いなので、三度もやって行った。宿の女年よりと知り合いになって、色々な山の菜を出して貰った。漬け物部屋までついて行って、説明を聞いたりしたものである。あいこ[#「あいこ」に傍点]・どほな[#「どほな」に傍点]・みずぶき[#「みずぶき」に傍点]・ごうわらび[#「ごうわらび」に傍点]・ほとき[#「ほとき」に傍点]まだ色々試して見たが、多くは忘れた。其中、ごうわらび[#「ごうわらび」に傍点]と言うのが、異様に歯や舌に触れた。どほな[#「どほな」に傍点]と言うのは私がすきで、信州の山中から時々とり寄せているうとうぶき[#「うとうぶき」に傍点]と同じ物であった。山の菜としては、うとうぶき[#「うとうぶき」に傍点]がやはり、本格的な薫りと、味いとを持っ
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