山の湯雑記
折口信夫
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)板谷《イタヤ》を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「虫+果」、第4水準2−87−59]
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山の※[#「虫+果」、第4水準2−87−59]※[#「虫+羸」、166−1]《スガル》の巣より出で入 道の上 立ちどまりつつる ひそかなりけり
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前に来たのは、ことしの五月廿日、板谷《イタヤ》を越えて米沢へ出ると、町は桜の花盛りであった。それほど雪解けの遅れた年である。高湯へ行きたいのだと雇いかけて見ても、どの家でも、自動車を出そうとは言わない。もう半月もせなければ、船阪峠から向うが開きますまいなどと、皆平気でとり合おうともしない。そのうち一軒、警察電話で、白布《シラブ》の宿へ問うて見ようと言う家が出来た。
二三个処、道へ雪のおし出して居る所はあるが、大体は谷へ落してしまったから、大丈夫這入って来られるだろうとの返事があった。それでやっと、すこっ
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