畳屋へ遣ると嚇されたものである。
九 しゃかどん
大阪府三島郡|佐位寺《サヰデラ》に「つの」とも「かど」とも訓む字と、其第三の訓《クン》とを用ゐて、家の名とした一家がある。其一門は、男女と言はず、一様に青黒い濁りを帯びた皮膚の色をしてゐるので、古くから釈迦どん[#「釈迦どん」に傍線]と言うてゐる。唯の黒さでなく、異様な煤け方である。其家の持ち地であつて、今は他家の物となつたと言ふ、村の山地には、釈迦个池と言ふ池がある。
一〇 夙村
河内の夙村では、村をとりまく濠やうの池のある事は、郷土研究にも見えた。但、其池はすべて、への字なりになつて居るといふ。
一一 ゆんべ
昨晩と言ふ語をば冒頭に据ゑた唄を、二つ報告する。但、二つとも末を忘れた。可なりな老人に聞いても知らぬ。要点は頭の方にある様だから書く。
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ゆんべ生れたくまちやんは、じより/\[#「じより/\」に傍線](月代)剃つて、髪結うて、そろばん橋を渡ろとて、蟹にちんぽ(きんたま)をはそまれて、あいたい、こいたい。権兵衛《ゴンベ》さん。此身を助けてくださんせ。……
ゆんべ吹い
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