事が訣る。
延喜式祝詞は、祝詞・寿詞、其他のものが混つてゐるために、訣らぬ処が多い。祝詞は、上から下に対して云ふものである。寿詞は、下から上に対して云ひ、其と共に、服従を誓ふ。天皇に寿詞が無く、氏々に此があるのは、此故である。又寿詞は、氏々の家が、天皇の御祖先と交渉を始めた来歴を、云ひかへれば、自分々々の家の為事の始め、本縁を説明するものである。此意味で室[#(ノ)]寿詞は、真の意味の寿詞ではない。ともかく何時でも、誓ひ、服従する時に唱へるのが、寿詞である。処が、学者達は、寿詞は祝詞の古いものだ、と説明してゐるが、私は、さうは思はない。
次に、もう一種の祝詞がある。それは鎮詞・護詞・鎮護詞などゝ書かれるいはひごと[#「いはひごと」に傍線]である。これが、ごちや/\になつて、祝詞の中に混つてゐる。斎部の祝詞は皆、此鎮詞である。いはふ[#「いはふ」に傍線]といふ言葉は、今、神をいはひこめる[#「いはひこめる」に傍線]等いふのと、略同じ意味である。これはいむ[#「いむ」に傍線]から出てゐる。いむ[#「いむ」に傍線]は、単に慎むといふ意で、いまはる[#「いまはる」に傍線]となると、その上に、身
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