川岸、此方の古川岸に、生ひ立てる、若水沼《ワカミヌマ》のいや若え[#「若え」に傍線]にみ若え[#「若え」に傍線]まし、濯《スヽ》ぎ振るをどみ[#「をどみ」に傍線]の水の、いやをち[#「をち」に傍線]にみをち[#「をち」に傍線]まし……」などに見えるをちかた[#「をちかた」に傍線]と言ふ語には、寿詞を通じてをち[#「をち」に傍線]霊の信仰が見える。わかゆ[#「わかゆ」に傍線]とをつ[#「をつ」に傍線]とを対照してゐるのは、同義類語と考へたのだ。わかゆ[#「わかゆ」に傍線]は「わかやぐ」の語原で、若々しくなる義だ。古くは、若くなる事であつたかも知れぬが、此辺の用語例はをつ[#「をつ」に傍線]と同じに用ゐてある。くり返す事を一個人について謂へば、蘇ることであり、又毎年正月に其年のくり返しする事にも言ふ。さうすると「みをちませ」は若返りの事を意味するのだ。
出雲国造は親任の時二度、中臣は即位の時一度だけであつたが、氏[#(ノ)]上の賀正事になると毎年あつた。天子の魂のをつる[#「をつる」に傍線]ことを祈るのが初めで、其が繰り返すことを祈るのである。生者だから蘇るといふのでなく、生も死も昔は魂に
前へ
次へ
全43ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング