ツタイ》らしくものを言ふ人たちを見ると、自分より教養の低いものたちから、無理やりに教育を強ひられてゐるやうな氣がして、堪《タマ》らなかつた。房主もいやだが、博士たちも小半刻も話してゐる間に、世の中があさましいものになつたやうな、どんよりとしたものにしか感じられなくなるのだつた。房主たちをおし臥せるやうな氣持ちで、二重底のある語を語つてゐると思うてゐると、驅り立てられた情熱が、當代の學者たちを打ち臥せるやうな語氣を烈しく持つて來てゐた。
現に今度の高野參詣も、出掛けの前夜になつて、もの/\しく、異見を言つて來た俊西入道があつた。儀禮にかうある、帝堯篇には、あゝ書かれてゐる、――そんなことが、天文の急變ではあるまいし、出立ちを三刻後《ミトキアト》に控へて、言ふやうでは、手ぬかりも甚しい。其も易や、陰陽の方で、言ひ出すのなら、まだしも意味がある。たゞ其が禮法でないの、先例がどうのと言ひ出すのでは、話にもならぬ。
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やまには宿曜《シユクエウ》經を見る大徳《ダイトク》が居るだらうな。
お見せになりますか。當山では、經の片端でも讀みはじめたものは、なぐさみ半分に、あれは致しま
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