死者の書 續篇(草稿)
折口信夫

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)習《ナラ》はしから、

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)公家|繪《ヱ》かきの

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)下※[#「くさかんむり/(月+曷)」、第3水準1−91−26]《ゲラフ》たちを、

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)もの/\しく
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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山々の櫻の散り盡した後に、大塔中堂の造立供養は行はれたのであつた。
それでも、春の旅と言へば、まづ櫻を思ふ習《ナラ》はしから、大臣は薄い望みを懸けてゐた。若し、高野や、吉野の奧の花見[#「花見」に「マヽ」の注記]られることのありさうな、靜かな心踊りを感じて居たのであつた。
廿七日――。山に著いて、まづ問うたのも、花のうへであつた。ことしはとり別け、早く過ぎて、もう十日前に、開山大師の御廟《ミメウ》から先にも、咲き殘つた梢はなかつた。
かう言ふ、僅
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