たちよりほかに、與らせぬ行事も間々御座います。日京卜らしいものもその一つで――。髮剃の使が見えられて、愈々御廟を開く三日前、一山の中唯三人、身分の高下を言はず、髮剃りの役に當る者が卜ひ定められます。其卜ひを致すものが、苅堂の聖の中から出てまゐります。以前はよく致しました。今は子どもゝ喜ばなくなりました博木《カリ》をうつやうな事を致します。それも僅かに二本――、やゝ長めな二本の※[#「綏」の「糸」に代えて「木」、第3水準1−85−68]《タラ》の木やうの物の枝を持つて、何やらあやしげな事をいたし居ります。それを色々をこつかした末に、大地の上に立てます。其が大日尊の姿だとか申して、その二本の枝を十文字に括りつけます。此が尊者の身のゆき身のたけ、この竪横の身に、うき世の人の罪穢れを吸ひとつて、卜ひ清めるのだとか申します。
行法終りますと、西の空へ向けて、西の山の端に舞ひ落ちようとする入り日に向けて、投げつけます。この磔物《ハタモノ》のやうに結ばれた棒が、峰々谷々の空飛び越えて、何處とも知れず飛び去ります。
まことに、僞りとも、まことゝも、まをすだけがわれ/\學侶の身には、こけ[#「こけ」に傍
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