百姓より進んで、石城を毀つて、新京の時世装に叶うた家作りに改めよと仰せられた。藤氏四流の如き、今に旧態を易《い》へざるは、最其位に在るを顧ざるものだとお咎めがあつた。此時一度、凡石城はとり毀たれたのである。ところが其と時を同じくして、疱瘡《もがさ》がはやり出した。越えて翌年、益盛んになつて南家・北家・京家すべてばた/″\と主人からまづ此|時疫《じえき》に亡くなつた。家に防ぐ筈の石城が失せたからである。其でまたぼつ/\とり壊した家も、旧《もと》に戻したりしたことであつた。
こんな畏しい事も、あつて過ぎた夢だ。がまだ、まざ/″\と、人の心には焼きついて離れない。
其は其として、昔から家の娘を守つた村々は、段々えたい[#「えたい」に傍点]の知れぬ村の風に感染《かま》けて、忍び夫《づま》の手に任せ傍題《はうだい》にしようとしてゐる。此は、さうした求婚《つまどひ》の風を伝へなかつた氏々の間では、忍び難いことであつた。其でも男たちは、のどかな風俗を喜んで何とも思はなくなつた。が、家庭の中では、母・妻・乳母《おも》たちが、今にいきり立つて、さうした風儀になつて行く世間を呪ひやめなかつた。
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