る。
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なる程、此は脆《さく》過ぎまする。
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刀自は、若人を呼び集めて、
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もつと、きれぬ絲を作り出さねば、物はない。
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と言つた。女たちの中の一人が、
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それでは、刀自に、何ぞよい思案が――。
さればの――。
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昔を守ることばかりはいかつい[#「いかつい」に傍点]が、新しいことの考へは唯、尋常《よのつね》の姥の如く愚かしかつた。
ゆくりない声が、郎女の口から洩れた。
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この身の考へることが、出来ることか試して見や。
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うま人を軽侮することを神への忌みとして居た昔人である。だが、かすかな軽《かる》しめに似た気持ちが皆の心に動いた。
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夏引きの麻生《をふ》の麻を績《う》むやうに。そしてもつと日ざらしよく、細くこまやかに――。
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郎女は、目に見えぬもののさとし[#「さとし」に傍点]を、心の上で綴つて行くやうに、語を吐いた。
板屋の前には、俄かに蓮の茎が乾し並べられ
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