》く団体の信仰が異端視せられるに不思議はない。
倭本村から一目置かれて居た大村の神と神人とは、次第に倭化はしながらも、幸福な推移をして行つたであらう。が、村君と血統上の関係を結びつけて考へるに到らなかつた神を祀つた村では、村君は郡領として尚《なほ》勢力を失はずに居ても神と神人とは不遇な目を見た。政教をひき裂く大化の政の実効のまづ挙つたのは、此種の村々であらう。而も何かの理由で、国造と関係のない者がとつて替つて郡領となつたり、さうでなくても中央から来た国司が、地方の事情を顧みないで事をする場合には、本貫に居る事が、積極的に苦しみの元であつた。日向の都野《ツヌ》神社の神奴は、国守の私から、国司の奴隷とせられた。神の憤りは、国司に禍を降す代りに、神奴の種を絶されるに到つた(日向風土記逸文)。此は国造の神が、郡領に力はあつても、倭から置かれた官吏には無力であつた事の、悲しい証拠である。と同時に、恐らく下級神人の二重奴隷と言ふ浮む瀬のない境涯に落ちた事を見せて居るのであらう。村々の神人にして、新しく這入つて来た倭の神の神奴にせられた者、神々の階級が下つた処から、神人の神奴の様にとり扱はれた者もあ
前へ
次へ
全68ページ中48ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング