路を辿り続ける事とする。日本の遊女の発生と、其固定に到る筋道は、柳田国男先生の意見が、先達の考案の蔑にしてよいものゝ多い、わが学界にとつては、後にも先にもない卓論であり、鉄案でもある。先生は微細な点までもじぷしい[#「じぷしい」に傍線]と殆ど同一の生活をして居た我が古代の浮浪民(うかれびと)なる傀儡子(くゞつ)と、其女性なる遊行女婦(うかれめ)との実在を証拠だてられた(明治四十一年頃の人類学雑誌に連載)。先住民の落ちこぼれで、生活の基調を異神の信仰に置いた其団体が、週期を以て、各地を訪れ渡つて居る中に、駅・津の発達と共に、陸路・海路の喉頸《ノドクビ》の地に定住する事になつた。女性の為事なる芸能(歌舞と偶人劇)と売色を表商売とする様になつて、宿々の長又は長者と言ふ事になつたと言はれて居る。私は、此同化せなかつた民族の後なるうかれびと[#「うかれびと」に傍線]の外に、自ら跳ね出して無籍者になつた亡命の民がまじつて居さうに考へる。つまり其がほかひゞと[#「ほかひゞと」に傍線]である事は、前に述べた積りである。
神人が大檀那なる豪族の保護を失ふ理由には、内容がこみ入つて居る。神を守つた村君が亡
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