に傍線]同様、各種の鎮魂行儀に、威力ある呪文として用ゐられたのがはじまりで、後までも、此意義は薄々ながら失せなかつた。大歌は次第に、声楽としての用途を展開して行つて、尚神事呪法と関係あるものもあり、其根本義から遠のいたものも出来た。記・紀にすら、詞章は伝りながら、既に用ゐられなくなつたもの、わざ[#「わざ」に傍線]・ふり[#「ふり」に傍線]の条件なる動作の忘れられたもの、後代附加のものも含めて居る様だ。だから替へ歌は文言や由来の記憶が錯乱したのや、詞章伝つて所縁不明になつたものも、勿論沢山にある道理だ。鎮魂祭・節折《ヨヲ》り・御神楽共に、元は、鎮魂の目的から出た、呪式の重複した神事である。うた[#「うた」に傍線]に近づいて行つたのは、信仰の変改である。
鎮魂と神楽とは、段々うた[#「うた」に傍線]を主にして行つた上、平安中期以前既に、短歌の形を本意にする様になつて居た。さうした大歌も、必しもすべて宮廷出自の物に限つて居なかつた。他氏のうた[#「うた」に傍線]或は、民間流伝の物までも、其に伴ふ物語又は説話から威力を信じて、採用したのも交つてゐる。
大歌には既に其所属の叙事詩の亡びて、説話
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