来たうた[#「うた」に傍線]が、自由な創作に移つて行く様になつたのは、尤である。
此種のうた[#「うた」に傍線]は、鎮護詞《イハヒゴト》系統から出たものばかりであつたと言うてよい。殿祭《トノホカヒ》・室寿《ムロホギ》のうた[#「うた」に傍線]は、家讃め・人讃め・※[#「覊」の「馬」に代えて「奇」、第4水準2−88−38]旅・宴遊のうた[#「うた」に傍線]を分化し、鎮魂の側からは、国讃め、妻|覓《マ》ぎ・嬬《つま》偲び・賀寿・挽歌・祈願・起請などに展開した。挽歌の如きも、しぬびごと[#「しぬびごと」に傍線]系統の物ではなく、思慕の意を陳べて、魂を迎寄《コヒヨ》せて、肉身に固著《フラ》しめるふり[#「ふり」に傍線]の変態なのであつた。
歌の中、鎮魂の古式に関係の遠いものは、叙事詩及び其系統に新しく出来た、壬生部《ミブベ》・名代部《ナシロベ》・子代部《コシロベ》の伝へた物語から脱落したものである。又或ものは系譜《ヨツギ》――口立《クチダ》ての――の挿入句などからも出てゐる事が考へられる。
記・紀に見えた大歌は、やはり真言として、のりと[#「のりと」に傍線]に於ける天つのりと[#「天つのりと」
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