は長上者に捧げると共に、其尊者の内在魂《タマ》の分割《フユ》を授かつた(毎年末の「衣配《キヌクバ》り」の儀の如き)申請《ノミマヲシ》の信仰のなごりが含まれて居る。又遥かに遅れて、興福寺僧の上つた歌(続日本後紀)の如きも、よごと[#「よごと」に傍線]を新形式に創作したと言ふだけのものであつた。
長歌について見ると、のりと[#「のりと」に傍線]・よごと[#「よごと」に傍線]系統のものが著しく多い。藤原[#(ノ)]宮[#(ノ)]御井[#(ノ)]歌の如きは、陰陽道様式を採り容れた創作の大殿祭祝詞(実はいはひ[#「いはひ」に傍線]詞《ゴト》)であり、藤原[#(ノ)]宮|役民《エノタミ》[#(ノ)]歌は、山口祭か斎柱祭《イムハシラマツリ》の類の護詞《イハヒゴト》の変態である。短歌の方でも、病者・死人の為の祈願の歌や、挽歌の中に、屋根の頂上《ソラ》や、蔦根《ツナネ》(つな[#「つな」に傍線]・かげ[#「かげ」に傍線])・柱などを詠んでゐるのは、大殿祭・新室寿の詞章の系統の末である。挽歌に巌門《イハト》・巌《イハ》ねを言ひ、水鳥・大君のおもふ鳥[#「おもふ鳥」に傍線]を出し、杖《ツヱ》策《ツ》いてのさ
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