自家のよごと[#「よごと」に傍線]を含めて組織したものが、語部の語り物|即《すなはち》「物語」である。宮廷以外の豪族の家々にも、規模の大小こそあれ、氏の長上と氏人或は部民との間に、のりと[#「のりと」に傍線]・よごと[#「よごと」に傍線]の宣[#「宣」に白丸傍点]・奏[#「奏」に白丸傍点]が行はれ、同じく語部の叙事詩の物語られた事は、邑落単位だつた当時の社会事情から、正しく察せられる。奈良の末に近い頃の大伴[#(ノ)]家持の「喩族歌」は、大伴氏としてののりと[#「のりと」に傍線]の創作化したものであり、「戒尾張少咋歌」の如きは、のりと[#「のりと」に傍線]の分化して、宣命系統の長歌発想を採つたものである。山[#(ノ)]上[#(ノ)]憶良の大伴[#(ノ)]旅人に餞《はなむけ》した「書殿餞酒歌」の如きものは、よごと[#「よごと」に傍線]の変形「魂乞ひ」ののみ[#「のみ」に傍線]詞《ゴト》の流れである。殊に其中の「あが主《ヌシ》の御魂《ミタマ》たまひて、春さらば、奈良の都に喚上《メサ》げたまはね」とある一首は、よごと[#「よごと」に傍線]としての特色を見せてゐる。
家々伝来の外来魂を、天子或
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