#「うたひ」に傍線]とを区別する様になつた。従つてうけひ[#「うけひ」に傍線]の場《ニハ》で当人の誦する詞が、うた[#「うた」に傍線]と言ふ語の出発点といふ事になる。尤、うたふ[#「うたふ」に傍線]ことの行為は前からあつたもので、其がうけひ[#「うけひ」に傍線]にうた[#「うた」に傍線]をうたふ[#「うたふ」に傍線]のが、其代表的に発達した形だつたからであらう。全体うた[#「うた」に傍線]と語根を一つにしてゐるらしい語には、悲愁・寃屈《ゑんくつ》・纏綿などの義を含んでゐるのが多い。
後世のくどき[#「くどき」に傍線]と言ふ曲節は此に当るもので、曲舞・謡曲時代から、抒情脈で縷述する部分の術語になつて居た。其が、近世では固定して、抒情的叙事詩の名称になつて、くどき[#「くどき」に傍線]と言へば、愁訴を含んだ卑俗な叙事的恋愛詞曲と言ふ風になつた。発生的には逆行してゐる次第である。一人称で発想せられてゐるが、態度は、三人称に傾いた地の文に対して、やはり叙事式の発想をしながら、くどき[#「くどき」に傍線]式に抒情気分を豊かに持つたものがうた[#「うた」に傍線]と見ればよからう。さうした古代の歌に
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