へると云ふ点では一つである。身替りの者の為に威霊の寓りを授ける呪言を唱へる事も、ほく[#「ほく」に傍線]と言ふやうになつた事を示してゐる。古代から近代に伝承せられた「衣配《キヌクバ》り」の風習も此である。外来魂を内在魂と同視した処から「とりつける」と言ふ様な考へ方になつて来る。
とにかく、ほく[#「ほく」に傍線]は外来魂の寓りなるほ[#「ほ」に傍線]を呼び出す動作で、呪言神が精霊の誓約の象徴を徴発する詞及び副演の義であつた。其が転じてほ[#「ほ」に傍線]を出す側から――精霊の開口《カイコウ》を考へ出した時代に――ほ[#「ほ」に傍線]に附随した説明の詞を陳べる義になつて、ほ[#「ほ」に傍線]を受ける者の生命・威力を祝福する事と考へられ、更に転じてほ[#「ほ」に傍線]が献上の方物となり、其に辞託《コトヨ》せて祝福を言ひ立てる――或は、場合や地方によつて、副演も保存せられた――事を示すやうになつた(イ)。
この以前からほき[#「ほき」に傍線]詞《コト》は、生活力増進の祝福詞である為に、齢詞《ヨゴト》の名を持つて居たらしく、よごと[#「よごと」に傍線]必しも奏詞にも限らなかつた様である。其が段
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