威力――の寓りと看做された形ある物及び現象であつた。ほ[#「ほ」に傍線]を提出する事が、守護の威霊を護り渡して、相手の威力・生活力を増させる訣である。ほ[#「ほ」に傍線]を示す即ほく[#「ほく」に傍線]動作が臣従を誓ふ形式になる所以である。
ほく[#「ほく」に傍線]が元、尊者から卑者にする事であつたのは、一方親近者の為に、威霊を分つ義のあつた事からも知れる。天照大神が、おしほみゝの命[#「おしほみゝの命」に傍線]――み子であるが、すめみまの命[#「すめみまの命」に傍線]と言ふ事は、語原及び其起原なる古信仰から見てさしつかへはない――の為に、手に宝鏡を持つて授けて、祝之《ホキテ》曰く、
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此宝鏡を視ること我を視るごとくなるべし。床を同《トモ》にし、殿を共にして斎鏡《イハヒノカヾミ》とすべし。(紀一書)
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と言はれたとも、「鏡劔を捧げ持ち賜ひて、言寿宣《コトホキノリ》たまひしく」(大殿祭祝詞)と言ふ様な伝へもある。此は、「己《オノ》が命《ミコト》の和魂《ニギタマ》を八咫鏡に取り託《ツ》けて」(国造神賀詞)など言ふ信仰に近づいてゐるのだ。威霊を与
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