ヒカタ》り」なども、もどき[#「もどき」に傍線]の口まね[#「口まね」に傍線]から出て、神などに扮した人の調子の低いはずの詞を、大きな声でとりつぐ様な役が分化してゐた。其が、あひ語り[#「あひ語り」に傍線]まで伸びて行つたのだ。宮廷神楽の「才《サイ》の男《ヲ》」の「人長」との関係も、神と精霊とから転化して来たのだ。此系統が千秋《センズ》万歳を経て、後世の万歳太夫に対する才蔵にまで、大した変化なく続いた。
又もどき[#「もどき」に傍線]は大人を悩す鋭い子役に変化してもゐる。延年舞以後ある大[#「大」に白丸傍点]・少[#「少」に白丸傍点]の対立で、田楽・能楽にも此要素は含まれて居た。殊に幸若舞系統から出た江戸歌舞妓では大[#「大」に白丸傍点]・少[#「少」に白丸傍点]の舞以外にも、とりわけ「少」の勢力が増して来た。猿若の如きは「少」から出たものである。若衆歌舞妓も其変態であつた。日本の演劇史に、もどき役[#「もどき役」に傍線]の考へを落したものがあつたら、無意味な記録になつて了ふであらう。
天狗・山男或は、四国の山中に居るといふさとり[#「さとり」に傍線]など言ふ怪物は、相手の胸に浮ぶ考へ
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