理由は、呪言の希望が容れられ、又は容れられない場合のうら[#「うら」に傍線]の出方が違ふ処から出る。
此が一転すると誓約《ウケヒ》と言ふ形になる。呪言を発する者に対して、標兆を示す者は幽界の者であつた。両方で諷誦と副演出とを分担して居る訣である。たつて[#「たつて」に傍点]物言ふまいとする精霊を表したのが「※[#「やまいだれ+惡」、第3水準1−88−58]《ベシミ》の面」である。此時が過ぎて精霊が開口しかけると、盛んに人の反対に出る。あまのじやく[#「あまのじやく」に傍線]と称する伝説上の怪物が、其から出て居る。気に逆らふ事ばかりする。口返答はする、からかひかける、横着はする。此が田楽以来あつた役目で、今も「里神楽《サトカグラ》」の面にあるもどき[#「もどき」に傍線]――ひよつとこ[#「ひよつとこ」に傍線]の事で、もどく[#「もどく」に傍線]は、まぜかへし邪魔をし、逆に出るを言ふ――に扮する人の滑稽所作を生んだ。
能楽の方では、古くもどき[#「もどき」に傍線]の名もあるが、専ら狂言として飛躍した。事実は脇役なども、もどき[#「もどき」に傍線]の変態なのであつた。狂言方の勤める「間語《ア
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