で示されてゐる。長い時間の推移も、助動詞助辞の表しきつて居ない処がある。
さうした呪言の文体が、三人称風になり、時法を表す様になつて来たのは――(宣命の様に固定した方面もあつたが)――可なり古代からの事であつたらしい。此が呪言の叙事詩化し、物語を分化する第一歩であつた。
わたつみの国[#「わたつみの国」に傍線]も常世の国[#「常世の国」に傍線]と考へられて行つた。わたつみの神[#「わたつみの神」に傍線]は富みの神であり、歓楽の主であり、又ほをりの命[#「ほをりの命」に傍線]に、其兄を征服する様々の呪言と呪術とを授けた様に、呪言の神でもあつた。又一方よみの国[#「よみの国」に傍線]は、呪言と其に附随してゐる占ひ[#「占ひ」に傍線]との本貫の様な姿になつて居た。
すさのをの命[#「すさのをの命」に傍線]は、興言《コトアゲ》の神であり、誓約《ウケヒ》の神である。祓除・鎮魂の起原も、此神に絡んでゐるのは、理由がある。鎮火祭の祝詞は、よみの国[#「よみの国」に傍線]のいざなみの命[#「いざなみの命」に傍線]の伝授であつたらしく、いざなぎの命[#「いざなぎの命」に傍線]の檍原《アハギハラ》の禊ぎも
前へ
次へ
全137ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング