程誘惑力を蓄へて行つた為である。
又、都会に出なかつた者は、呪力を利用して博徒となり、或は芸人として門芸を演じる様になつた。
更に若干の仲間を持つた者になると、山伏しとして、山深い空閑を求めて、村を構へ、修験法印或は陰陽師・神人として、免許を受けて、社寺を基とした村の本家となつた。或は、山人の古来行うてゐる方法に習うて、里の季節々々の神事・仏会に、遥かな山路を下つて、祝言・舞踊などを演じに出る芸人村となつた。
わが国の声楽・舞踊・演劇の為の文学は、皆かうした唱導の徒の間から生れた。自ら生み出したものも、別の階級の作物を借りた者もあるが、広義の唱導の方便を出ないもの、育てられない者は、数へる程しかないのである。

[#5字下げ]七[#「七」は中見出し]

山人の寿詞・海部《アマベ》の鎮詞《イハヒゴト》から、唱門師の舞曲・教化、かぶき[#「かぶき」に傍線]の徒の演劇に到るまで、一貫してゐるものがある。其はいはひ詞[#「いはひ詞」に傍線]の勢力である。われ/\の国の文学はいはひ詞[#「いはひ詞」に傍線]以前は、口を緘《とざ》して語らざるしゞま[#「しゞま」に傍線]のあり様に這入る。此が猿楽其
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