他の「※[#「やまいだれ+惡」、第3水準1−88−58]《ベシミ》の面」の由来である。其が一旦開口すると、止めどなく人に逆ふ饒舌の形が現れた。田楽等の「もどきの面」は、此印象を残したものである。其もどき[#「もどき」に傍線]の姿こそ、我日本文学の源であり、芸術のはじまりであつた。
其以前に、善神ののりと[#「のりと」に傍線]と、若干の物語とがあつた。而も現存するのりと[#「のりと」に傍線]・ものがたり[#「ものがたり」に傍線]は、最初の姿を残してゐるものは、一つもない。其でも、此だけ其発生点を追求する事の出来たのは、日本文学の根柢に常に横たはつて滅びない唱導精神の存する為であつた。
ほかひ[#「ほかひ」に傍線]を携へ、くゞつ[#「くゞつ」に傍線]を提げて、行き/\て又行き行く流民の群れが、鮮やかに目に浮んで、消えようとせぬ。此間に、私は、此文章の綴《トヂ》めをつくる。
底本:「折口信夫全集 1」中央公論社
1995(平成7)年2月10日初版発行
底本の親本:「古代研究 国文学篇」大岡山書店
1929(昭和4)年4月25日発行
初出:「日本文学講座 第三・四・一二巻」
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