(竹笠を作る公役を持つ)・斎明紀の鬼――の姿である。とき/″\人間界と交通があつて、岩窟の中の阪路を上り下りする様な処であつた。其常闇の国が、段々光明化して行つた。海浜邑落にありうちの水葬――出雲人と其分派の間には、中世までも著しく痕跡が残つて居た――の風習が、とこよの国[#「とこよの国」に傍線]は、村の祖先以来の魂の集注《ツマ》つて居る他界と考へさせる様になつた。海岸の洞穴――恐ろしい風の通ひ路――から通ふ海底或は、海上遥かな彼岸に、さうした祖先以来の霊は、死なずに生きて居る。絶対の齢《ヨ》の国の聯想にふり替つて来た。其処に居る人を、常世人[#「常世人」に傍線]とも又単にとこよ[#「とこよ」に傍線]・常世神[#「常世神」に傍線]とも言うた。でも、やはり、常夜・夜見としての怖れは失せなかつた。段々純化しては行つたが、いつまでも畏しい姿の常世人を考へてゐた地方も多い。
冬と春との交替する期間は、生魂・死霊すべて解放せられ、游離する時であつた。其際に常世人は、曾《かつ》て村に生活した人々の魂を引き連れて、群行《グンギヤウ》(斎宮群行は此形式の一つである)の形で帰つて来る。此|訪問《オトヅレ
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