傍線]は、外来魂信仰が多くの物の上に推し拡げられる様になつた時代、即わりあひに遅れた頃に出た神名だと思ふ。

[#5字下げ]二 常世国と呪言との関係[#「二 常世国と呪言との関係」は中見出し]

おもひかねの命[#「おもひかねの命」に傍線]を古事記には又、常世《トコヨ》[#(ノ)]思金[#(ノ)]神とも伝へてゐる。呪言の創始者は、古代人の信仰では、高天原の父神・母神とするよりも、古い形があつた様である。とこよ[#「とこよ」に傍線]は他界で、飛鳥・藤原の都の頃には、帰化人将来の信仰なる道教の楽土海中の仙山と次第に歩みよつて、夙くから理想化を重ねて居た他界観念が非常に育つて行つた。
とこよ[#「とこよ」に傍線]は元、絶対永久(とこ)の「闇の国」であつた。其にとこ[#「とこ」に傍線]と音通した退《ソ》く・底《ソコ》などの聯想もあつたものらしく、地下或は海底の「死の国」と考へられて居た。「夜見の国」とも称へる。其処に転生して、其土地の人と共食すると、異形身に化して了うて、其国の主の免《ゆる》しが無ければ、人間身に戻る事は出来ない。蓑笠を著た巨人――すさのをの命[#「すさのをの命」に傍線]・隼人
前へ 次へ
全137ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング