」である。此分類は、長い歴史ある、用語例である。物語と言ふ語も、後には歴史・小説など、意義は岐れて來たが、單に會話の意味ではない。此亦古くからある語で、語部の「語りしろ」即敍事詩の事なのである。
語部の曲節に、音樂として、さほどの價値があつたらうとは考へられない。けれども、出發點から遠ざかつて固定を遂げる間に、若干の藝術意識は出て來た事と思はれる。文字や史書が出た爲に、語部が亡びたとは言へない。眞の原因としては、保護者を失うた外的の原因のほかに、藝術的内容が、時代とそぐはないものになつたと言ふ事が考へられる。語部の物語が段々、神殿から世間へ出て來た時代が思はれる。家庭に入つて諷諭詩風な效果を得ようとした事も、推論が出來る。一族の集會に、家の祖先の物語として、血族の間に傳る神祕の記憶や、英邁な生活に對する※[#「りっしんべん+淌のつくり」、第3水準1−84−54]※[#「りっしんべん+兄」、第3水準1−84−45]を新にした場合なども、考へることが出來る。神との關係が一部分だけ截り放されて、藝術としての第一歩が踏み出されるのであつた。書物の記載を信じれば、藤原朝に既に語部が、邑・家・土地
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