國文學の發生(第一稿)
呪言と敍事詩と
折口信夫

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)語部《カタリベ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)神|憑《ガヽ》り

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「りっしんべん+淌のつくり」、第3水準1−84−54]

 [#(…)]:訓点送り仮名
 (例)八千矛[#(ノ)]神
−−

        一

日本文學が、出發點からして既に、今ある儘の本質と目的とを持つて居たと考へるのは、單純な空想である。其ばかりか、極微かな文學意識が含まれて居たと見る事さへ、眞實を離れた考へと言はねばならぬ。古代生活の一樣式として、極めて縁遠い原因から出たものが、次第に目的を展開して、偶然、文學の規範に入つて來たに過ぎないのである。
似た事は、文章の形式の上にもある。散文が、權威ある表現の力を持つて來る時代は、遙かに遲れて居る。散文は、口の上の語としては、使ひ馴らされて居ても、對話以外に、文章として存在の理由がなかつた
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