語が多いのは、平安朝になつて非常に乱脈に敬語が殖えて来る。つまり、女が多いから、滅茶苦茶に敬語が殖え、又滅茶苦茶に間違つて来る。敬語を無茶苦茶に使ふ階級と言ふものは、いゝ階級だと思うてをりますからして、無闇とはいから[#「はいから」に傍線]な言葉を使ひ、多少でも、資産のあるやうなことを衒つてゐる人達は、幾らでも、なんか変な言葉を発明してをります。「ござあます」なんてことを言ひます。さうなりますと、以前の吉原の女郎みたいな言葉を使ひます。さう言ふ言葉をしきりに作つて行くのです。
尚、この貴族の言葉と武家の言葉だけでも申さなければなりませんのですけれども、この辺で切り上げさして戴きまして簡単に結末をつけたいと思ひます。
鎌倉・室町の武家時代になりますと、武家は国々の言語を矯め整へなければなりません。自分の生活を上品にしなければなりません。事物の観方を上品にしなければなりません。だから文学は中央の文学をとつて来ます。歌は今考へればわけなく作れたやうに思ひますけれど、昔の人は無闇と難しい様に考へた。で、歌は作れぬけれど連歌を作る。その上で歌を作ると言ふ風にやつてゐたのでせう。それから文章と言ひ
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