使へない。それで、神様に対しては何にもしない。だから、その手を動かさない生活からして、月経の事をてなし[#「てなし」に傍線]と言つてゐる。その他月経なんかに対しては色々言ひ方があるでせう。ところが、もつと極端な処になると、御承知の通り、古くから斎宮の忌み言葉と言ふものがありまして、それにはをかしい様な、へんてこなやうなものが沢山あります。我々は女房階級の生活を見ると、よく訣つて来る。それと共に近世迄もずつと、女房言葉と言ふものを使つてゐる様です。附けなくてもいゝ処にお[#「お」に傍線]をつけたり、又「文字《モジ》」をつけたりする。髪なんかかもじ[#「かもじ」に傍線]と言ひ、寿司なんかすもじ[#「すもじ」に傍線]と言ふ。つまり、全体を言ふと、何だか露骨で下品だと言ふ訣なのですが、或は豆腐のことをおかべ[#「おかべ」に傍線]と言ふやうなやり方もやります。さうして、さう言ふ言葉が出て来ますと、それを上品だ、とかう言ふ風に思ふのです。大体、敬語と言ふものゝ発達には、女の人の敬語意識と言ふものを考へなければなりません。今迄の敬語の研究と言ふものは、女の人の作る敬語と言ふものを考へない。日本語に敬
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