るんだから、それは態度のよし悪しではない、と言ふ風に考へて戴かなければなりません。
その場合に、大変都合のいゝ事は、時代として定つた書物の上の国語の外に、時代の一切訣らない――と言ふと語弊があるかも知れませんが――まあ訣らないものが非常に多い。それは、所謂国語として扱はれてはをりませんが、国語であるには違ひない方言と言ふものであります。方言と言ふものは、記録せられた言語の何層倍もあつて、それが生れたり死んだり、又形が変つたりして、生滅してをります。だから方言と言ふものは年代が訣らない。古いとも言へない。或は中世のものとも定められない。同時に古代のものでもあり、中世のものでもある事が出来るのです。だから、方言と言ふものゝ学問に対する本当の価値と言ふものは、未だ未知数なのです。我々の様に補助学科として、方言をば国語学の上に利用する価値と言ふものは、未知数です。未知数だけれども、兎に角思ひ切つてしまふ事が出来ない。事実方言を使つて居ると、続々成績が挙つて来る。さう言ふものがあるから、我々は方言を其処へ利用してくれば、更に材料が殖えて来る訣です。
御承知の通り国学の先輩達も、方言と言ふものゝう
前へ
次へ
全90ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング