、仁賢天皇の時分だと言ふ事になつてゐる。そんな事の歴史上の事実を求めると言ふ我々の類推力と言ふものは、此処で説明しなくてもいゝ事なのです。その後に続いてゐる今の「秋葱の云々」も、つまり、謎の解答みたいなものなのです。「秋葱のふたごもり」ではないけれども、と言ふやうに申して見たらいゝでせう。ごちや/\になつてゐると言ふ事なのでせう。舅と嫁が結婚すると言ふ事を「芋洗ひ」などゝ言ひますが、さう言ふ事に似た感じなんでせう。つまり、諺の解説がついてゐる謎です。
又土地の諺も沢山あります。大抵の場合、かう言ふ歴史上の事実からかう言ふ諺が起つたのだ、と言ふ風に書いてあります。「かれ、何々とぞ言ふ」と言ふ風に書いてあります。玉作りが役に立たぬ玉を差上げたので、天子様がお怒りになつて、玉作りの土地をお奪ひになつた。それで、「地《トコロ》得ぬ玉作り」と言ふのだと言ふやうになつてゐる。そしてそれに就いての説明として、名高い歴史上の事実をずつと使つて来た。垂仁天皇様の皇后がその兄君のお城にお這入りになつた時、子供だけを城からお出しした。その時、その子供と共に、お母さんの手を引張らうとして、玉の緒を引張つたら、
前へ 次へ
全90ページ中56ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング