普通なら切れないのに、玉作りが、予め、引張ると切れる様に腐らしておいたので切れてしまつた。それでその城が焼けて――稲を積んで出来てゐたから――皇后様はおかくれになつてしまはれた。それで、天子様がお怒りになつて、玉作りの土地をお取上げになつた、と言ふ物語ですが、この物語とこの事とに、つながりのある部分は昔の人の空想で出来てゐる。かう言ふ形の諺と言ふものは沢山あるのです。それが平安朝に持ち越されて、平安朝の物語、所謂歌物語と言ふものが出来てをります。その場合には歌と諺とは、殆ど同じに扱はれてをりまして、譬へば、竹取物語をみると、諺の話が沢山出て来るのです。その時からかうなんだと説明がしてある。癪に触つたから持つてゐた鉢をぱつと捨てゝしまつた。それで、その時から「面《オモ》なきことをば、はぢを棄つとはいひける」とかう書いてある。今では洒落にもなんにもならぬけれども、つまり、短い物語と言ふものは、さう言ふものが発達してゐる訣です。かう申して来ると、多分に文学的なところになつて来ますが、文学的な処は切り上げたいと思ひます。
五 古典の擬古的傾向
先に申しました様に、諺には問と答とで
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