知つてゐる限りでは、諺と言ふものは偶数句になつてをり、歌と言ふものは奇数句になつてゐるものです。偶数句の歌と言ふものは、諺の影響を受けてゐるのです。だから、古い時代の歌と言ふものは諺に近い。古事記、日本紀或は万葉集の古い歌は偶数句に近くて、これは諺とそんなに離れてゐないと言ふことになります。
諺と言ふものは、そんな風な性質を持つてゐる。そして当然の理由から、かう短くなつて行つたが、もとは相当長かつたゞらうと思ひます。けれども、長かつたら諺ではない。つまり、諺と言はれてゐるものは、伝承されてゐた文句が切れて短くなつてしまつてから、諺となつたのです。だから、私はかう言ふ風に考へてゐるのです。本道は諺と言ふものゝもとには、呪詞がありまして、その中の一番の急所が、諺として残つてゐる。歌も同じで、歌と言ふものゝもとには長い叙事詩があつて、それが歌はれてゐる中に、その中の一部分だけが歌はれるやうになつた。その部分は一部分だけ歌つてゐても、全体歌つてゐるのと同じ効果を持つと言ふ程、威力がある部分です。さう言ふものだと思ひます。兎に角諺と言ふものは沢山あります。歌程はございませんけれども、殆ど同じ位沢
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