ものは、結局、その土地を自由にすることが出来る威力と同じことです。言霊と言ふものは、国魂と言ふものと同一視してゐますが、もとは違ふでせう。宮中で行はれた事を見ても、国の魂と言ふものがよく訣るのです。天子様の御身体には、大和の国を御自由になさる魂が、這入つてゐるのですが、国々の古い領主にも、さう言ふ国魂と言ふものが這入つてゐるのです。その国魂と言ふものと、言霊と言ふものとを一つにしてゐるが、本当の事は説明がよくつくのです。
その国魂と言ふものは、たゞでは体に這入らない。沖縄あたりに行つてみますと、魂を落しますと、「まぶい籠《ク》み」と言つて、まぶい[#「まぶい」に傍線]を体に籠めると言ふので、色々な石を拾つて来て、ゆた[#「ゆた」に傍線]と言ふ者に石を与へることに依つて、まぶい[#「まぶい」に傍線]が這入ると言うてをります。併し、日本の本島のは、言葉を通して魂が這入つて来る、即ち、言語は仲介者であると考へてゐたのでして、後には、言語そのものも魂を保有してゐると考へる様になつて来たのです。これを強く感じると言霊信仰ですが、兎も角、魂の這入つた言葉と言ふものがあるのです。それを体のなかに入れ
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