ば私は満足するのですが。

     四 諺の発生及びその伝承

民間伝承の方で取扱ふ言語伝承と言ふものは、色々あります。色々あるのですけれども、大体三つの区分があると思ひます。一つは宗教的な言葉で、まあ呪言とか呪詞とか言つておいていゝでせう。それから、まう一つは言語遊戯。言葉の遊戯です。それから、まう一つは方言です。併し、この他にまう一つ重要なものがあります。つまり、文学的な口頭伝承です。口の上で伝承せられるもの、それが、口の上ばかりで伝承せられてゐることもあり、筆記せられて、文章になつてゐるものもあります。併し、私は多くの場合、これを言語遊戯として、同じ項目に入れて考へてをります。つまり、呪言と、言語遊戯と――その中へ非文学と名前をつけてゐるものを入れてゐます。文学にして文学に非ざるものと言ふ訣で、非文学と言ふ名前をつけてをります。――それから方言と、大体この三つですが、今これに就いて、詳しく申してゐるのも大変なことですから、極く、断片的な事を申しませう。
一体、我々は遊戯と言ふものをば、非常に昔とは変つて考へる様になつて来てゐます。遊戯と言ふものは、昔、宗教的な儀礼をば練習すると
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