文学的になつて参ると思ひます。譬へば、それ等の階級を、――或は階級以外のものでもですが――言葉だけで申しますと、宮廷方言、貴族方言と言ふ様な言ひ方で、考へていゝ訣です。そしてそれをひつくるめて、女房方言と言ふものがあります。或はその他には、武官の階級であれば武官方言、寺家の階級であれば寺家方言と言ふものが出来て来るでせう。けれども、その中の隠者と言ふものは、方言を持つてゐません。つまり、生活を持たず、社会を持たないものであつて、隠者と言ふ者は、何時でも、色々な社会にくつゝいて行くだけです。貴族の家へも行けば、武家の家へも行く。そしてそれ自身の大きな社会と言ふものを持たないのですから、隠者の方言と言ふものはない。隠者と言ふものが持つてゐたのは、文学語だけです。それで、世捨人が持つてゐるものと、武家の方言と言ふものに就いては、簡単に申されません。武家は日本国中に散在してをつたのですから、その武家をば、一遍に武家方言と言ふやうな風に、ひつくるめて申すことは出来ません。大体、国語をば階級に嵌めて見ましても、さう言ふ風に嵌つて行くのです。併し、尚、国語の伝承せられて行くその過程らしいものが釈けれ
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