房の階級に纏綿して搦みついてゐるのは王族で、それから貴族です。これは主流ではないのですけれど、王族とか貴族とかの文学は皆あるのでして、これが調和して、女房文学になつて来た訣です。で王族、貴族の文学と言ふものも考へる必要があるのです。それから、女房文学が隠者文学に移つて行く過程も、やはりあるのです。寺家《ジゲ》文学、寺の家と書いて寺家の文学と言ふものがございます。それから武家の文学と言ふものがあります。鎌倉、室町時代になりますと、隠者文学に影響を与へた非常に低級な文学があります。――低級な文学と言ふものも見る必要があります。高級な文学ばかり見て居つたんでは為様がない。低級な文学が高級な文学を動かしてゐるのです。低級な文学と提携しなければ高級な文学と言ふものも、やはり生命を保つて行けないのですから。――その低級な文学に武官、武家の文学があつたのです。大体これだけです。日本の文学の系統はごく、簡単です。
ところが古いところでは、文学をば伝承し或は存続させると言ふことは、つまり、言語を伝承し、言語を存続させると言ふ事と同じ事なのです。なんにも意味が変らないのです。だからその点に於いて、話は自然
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