の時には、是非さうしなければならぬのです。只今は国文学の話ではないのですから、少しも必要はないやうなものですけれども、この場合にも、略《ほぼ》同じ形に嵌るのですから、階級の名前だけ挙げて置きます。
国文学の上では、先づ、文学者の階級として女房階級と言ふものを私は置いてゐるのです。女房即ち、宮廷或は貴族に仕へてゐる高級の女官で、さう言ふものが国文学の支配をしてをつた時代です。さう言ふ時代に於いては男が作つても女の姿で作る。土佐日記など御覧になりましても訣りますやうに、男のすなる日記と言ふものを女もしてみむとてするなり、と女に仮装して書いて居る。さう言ふ連衆が、書いてゐる中にだん/\実力を得て来る様になり、表面に出て来て、作者の本当の階級になつて来ます。それ等を隠者階級と言ひました。これが江戸の始め迄続いてゐた文学者の階級です。それから後は、町人の文学者の名が出て来た。元禄前後からの事です。これを戯作《ゲサク》者と呼んでをりますが、これは隠者階級の形をだん/\学んで、さうして、独立して戯作をした。これが明治迄の有様です。かう言ふ風に、非常に少いが、その間に色々な階級が割込んで来る訣です。女
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